へき地は医療人をステキにする

山口県立総合医療センター

へき地医療支援センター長

原田 昌範

 

「へき地は医師をステキにする」は、三重県の神島に長く勤務された自治医科大学の大先輩、奥野正孝先生の言葉です。私も自治医科大学を卒業し、卒後7年目に派遣されたへき地は父のふるさとでした。そこで祖母と暮らす祖父は、脳梗塞後遺症による誤嚥性肺炎で入退院を繰り返し、ほぼ寝たきりで、私が主治医となりました。入院を嫌う祖父は、へき地診療所の看護師さんや訪問看護師さんのおかげで、祖母と自宅で療養を続けることができ、私が赴任してから1年後、最期を自宅で祖母と私と迎えることができました。

その翌年、萩市大島という離島に派遣されました。忘れもしない最初の救急搬送は、3歳のてんかん重積発作でした。お母さんは慌てていましたが、赴任して間もない私も慌てていました。初めての救急搬送でしたが、冷静な看護師さんのおかげで、お子様は無事助かりました。その島で生まれ育ち、カルテには記載されていないその島のことを何でもよく知っている看護師さんは、離島勤務経験のない私にとって、本当に心強い存在でした。

自治医科大学を卒業し、言われた離島へき地に赴任しましたが、振り返れば、非常に貴重な経験をさせていただきました。医療資源が限られているからこそ、一人ひとりが「多機能化」せざるを得ないため、知恵や工夫が生まれ、大きな病院では決して得ることができない幅広い経験ができます。地域住民との距離が近い離島へき地は、「人や地域とのつながり」や「豊かさ」、そして「感謝」を身近に感じることのできる場所であり、それが奥野先生のメッセージにつながるのだと思います。

近年、人口減少社会となり、離島へき地は厳しい状況が続き、その課題解決の手段として遠隔医療が注目されています。2019年から厚生労働省のオンライン診療に関する研究班の班長として、看護師が患者のそばにいるオンライン診療の形式を離島へき地で実証してきました。実は2017年、へき地で一人暮らしとなった祖母が92歳の時に胆管がんがステージⅣで見つかり、自宅療養を続けるために、訪問看護師さんにお世話になりました。その看護師さんと時々iPadでつながり、祖母と会話していたのが、私のオンライン診療の原点です。厚労省の実証による成果として、離島へき地ではこの形式(D to P with N)でオンライン診療をした場合、新たに診療報酬加算が付くことになり、限られた医療資源の場所であっても、看護師さんと連携し医療DXを組み合わせることで、医療と安心を届けることができる手段が増えました。

離島へき地は将来の日本の姿とも言われます。これからも課題先進地域、最先端の場所をみんなで守り続けることが、日本の将来を守ることにつながると確信しています。