
山口市健康増進課 健康づくり徳地担当 岡谷 広子
「へき地の看護」と聞いて、皆さんはどのようなことを思い浮かべるでしょうか。
医療資源の不足や高齢化の進行、通院の不便さなど、様々な課題を想像されるかもしれません。もちろん、それらはへき地が抱える現実です。
しかし、徳地地域で保健師として活動する中で、私はへき地ならではの魅力も実感しています。

徳地で仕事をしていると、「あの人、最近元気がないな」「診療所に受診できているかな」と住民から声をかけられることがあります。住民の何気ない一言が、専門職の気づきにつながり、支援のきっかけになることがあります。そんな場面に出会うたびに、「地域の人の目も地域を支える大切な力なのだ」と感じます。
山口市徳地は、広い地域に集落が点在する中山間地域です。高齢化が進み、移動手段の確保が暮らしの大きな課題となっています。
だからこそ、この地域では医療や福祉だけでなく、人とのつながりが暮らしを支える力になっています。
そんな地域のつながりを支える拠点の一つが徳地診療所です。令和4年に徳地地域複合型拠点施設の開設に合わせて敷地内に開設されました。医療を提供するとともに、人と人、人と地域、そして情報をつなぐ役割を担っています。
こうした地域のつながりを支えているのが、徳地の「おせっかい」です。
「おせっかい」には二つの意味があります。一つは、住民が声をかけ合い、見守り合う温かなつながり。もう一つは、徳地診療所、地域包括支援センター、保健センターが定期的に情報交換する「おせっ会」です。

例えば、受診を拒んでいた認知症のある高齢の方について、保健師が把握した生活状況やご本人の思いをおせっ会で共有したことがありました。その後の受診では、医師がその情報を踏まえて診察し、専門医への受診や介護保険の申請につながりました。
こうした多職種のつながりの中で、私たち看護職には人と人をつなぐ役割があります。また、保健師だからこそ見えてくる「暮らしの視点」も支援に活かされています。
先日、地域医療を学ぶ学生が徳地で実習を行いました。学生からは「地域の温かさや人とのつながりを感じた」「多職種連携が自然に行われていた」といった感想が聞かれました。
私たちにとっては日常ですが、学生の視点を通して、日々の声かけや見守り、情報共有の積み重ねが地域の暮らしを支えていることを改めて再認識しました。
へき地では、限られた医療資源の中で暮らしているからこそ、一人ひとりの暮らしを知り、人とのつながりを大切にすることが欠かせません。それは看護職だけで成り立つものではなく、地域の皆さんとともに育み、支えていくものです。
地域の「おせっかい」に支えられながら、私たちもまた地域の一員として人と暮らしを支えていく。
それが、私が徳地で見つけた「地域とともにある看護」です。