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長野県看護大学
学長 安田 貴恵子
<へき地診療所の利用者と看護師の調査からみえたこと>
へき地診療所は、普段地域で生活している方が身体の異常を感じた時に最初に受診するところであると同時に、慢性疾患の治療や保健指導を継続的に受けるところでもあります。山間へき地に暮らす人々にとって、医師や看護師がいる安心の砦になります。私は以前に、へき地診療所を利用するあらゆる年代の方々に対して診療所の看護に関することを、へき地診療所で働く看護師のみなさんには看護の内容についての調査を行いました。利用者の調査結果では、「病気やケガの手当などをわかりやすく正確に説明してくれる、処置が適切である」と看護師に大きな信頼を感じていました。それに加えて、「自分のことを覚えていてくれる」、「自分ことや家族のことも気遣った言葉をかけてくれて嬉しい」、「看護師さんに会って元気をもらって帰る」など、看護師との関係性をとても高く評価していました。
一方、看護師の調査では、診療の流れを意識しながら、病気や治療に関することだけでなくお一人おひとりの暮らしぶりを捉えて個別性のある看護をしていました。例えば、家で認知症の夫を介護している高齢女性にねぎらいの言葉をかける、村の巡回バスを利用して受診に来る人にバスの時刻を配慮して調整するなどです。看護師のみなさんに診療所利用者の調査結果をお伝えすると、診療の流れを妨げないように注意しながら短い時間の中で行っていることが利用者に伝わっていると喜んでいただけました。
山間へき地の地域医療での看護を通して、地域に根差したジェネラリストとしての力が鍛えられると考えます。それは、いのちをまもるために必要な知識とスキル、健康と生活が密接に関係していることを踏まえた支援を考える想像力、住民を中心においた関係者と連携を築くコミュニケーション能力です。これらの内容は、それぞれが独立しているのではなくつながっています。山間へき地で働く看護職の方は、謙遜して“何でも屋です”とおっしゃることがありますが、行っていること全てが“へき地で生きる”を支える看護になるのです。
<暮らしに根付いた看護を創造する>
へき地とひとくくりにすることはできません。資源が少ない、人が少ないなどの共通性はありますが、その環境の中での人々の暮らしぶり、当たり前のこととして慣習となっていることや土地ならではの文化は違いが見られます。隣り合っている集落ごとに違うことも少なくありません。それらは、健康や病気に対する考えや家族介護の考えや方法にも表れます。看護実践を通して、地域との相互作用のある生活の営みの中で病気の療養や介護・育児が行われていることが見えてきます。その積み重ねは短い時間の言葉のやり取りだとしても、気遣いのあるコミュニケーションとなっていきます。接する時間は断片的であったとしても、その断片をつなぎ合わせて人々の暮らしぶりにあった看護を考え、実践する力が養われます。
このように日々行われる“業務”の中に看護として大事な要素が含まれています。それを、誰に対してもどのような環境でも状況に合わせて実践できることが、ジェネラリストとしての専門性だと考えます。