
礼文町国民健康保険船泊診療所
小川 万梨野
“看護って楽しい!”最北の離島、礼文島で従事し始めて5回目の春。当初から感じたこの思いは今でも変わりません。
私が離島での看護に飛び込む決意を決めたのは、ある患者さんとの出会いからでした。前職場に入院されていたその方は、積極的治療をやめ、島で最期を迎える決断をして帰島されました。旅行も兼ねて島に会いに行ってみると、人が変わったようかのように生き生きとした笑顔で出迎えてくださいました。穏やかな世界が島にはある、そんな気がして翌年、島への就業を決めました。
実際に暮らしてみると、島時間はゆったりとしていました。コンビニは1軒、娯楽施設はほぼなく、夜遅くまでやっているお店も数えるばかりです。夜は静かで、ぐっすりと眠ることができます。そして漁業が第一産業である礼文島では多くの海の幸があります。時には、獲れたての魚を恵んでいただくこともあり、初めて島のホッケを食べた時には美味しすぎて驚くほどでした。加えて、島にはまるで絵はがきを見ているかのような、綺麗で雄大な景色が広がっています。別名「花の浮島」と呼ばれるこの島には約300種に及ぶ花が咲き乱れ、日々の癒やしがたくさんあります。このように素敵な環境で生活を送っている島民は、心にゆとりがあり優しく温かみに溢れています。

看護業務も比較的余裕があり、せかせかすることなく働けます。業務内容は多岐にわたりますが、経験豊富な島のベテランナースと、応援ナースなどの中堅層多めの島外スタッフと、個性を認め、個人の能力を活かし合いながら働けていると感じます。みんなで患者さんのことを考え、じっくりと関われる職場です。
その中で気づけたのが、認知症看護の魅力です。都会での切羽詰まった業務の中で、認知症の方をいつの間にか疎ましく思ってしまうこともありました。島に来て、じっくりと関わってみると認知症の方の優しさに、はっとさせられることがありました。ある夜勤明けの朝、疲れていた私は少し気が立っていました。その時に100歳近い患者さんが、いつもどおりの屈託のない笑顔で私のケアを受け入れたことで、疲れを忘れ元気づけられ助けられたのです。認知症の方は本当に素直だなと思います。不安そうな表情をしていれば手を握ってそばにいて、落ち着かなければとことん一緒に歩いて、昔話をじっくり聞いて、たったそれだけのことでその人らしい表情が戻り「ありがとう」と言ってくれる。島の看護にはそんな素敵な気づきが溢れていました。認知症看護の場面だけでなく、笑顔で目を見て手を取って挨拶をすることこそが看護の礎だと再認識させられました。
そうして現在は毎日笑顔で島暮らし、看護を心から楽しめています。自身の看護を探す旅に出てみてはいかがでしょうか。
