写真①健康相談に向かう道中から見える景色
過疎地で働く保健師としての覚悟

早川町役場 福祉保健課 保健師 標弥生

町保健師チーム(著者右)

 

 

 

 

 

 

当町は人口812人(令和7年10月現在)と全国で最も人口が少ない町であり、令和6年度出生数は2人、高齢化率49%(令和7年10月現在)と少子高齢化、過疎化が急速に進んでいる町です。町内に医療機関はなく、隣町にある病院から医師が出張し月1〜2回開所される無床診療所が5カ所あるのみです。町と周辺地域とを結ぶ唯一の県道は、町を通り抜けることはできないうえ、連続雨量70mmで通行止めとなります。このような状況により、医療へのアクセスの問題や公共交通機関が乗り合いバスのみという過疎地域特有の課題はありますが、フォーマルなサービスの参入がほとんどない地域だからこそ、住民が過酷な環境の中でも支え合い逞しく生きている町で、私は保健師として活動しています。

当町では、地区担当保健師が集落に赴き直接住民と対話する「健康相談」という特徴的な事業を、地域の世話人さんと日程調整し18集落で1〜2か月に1回行っています。その日に参加した住民の世間話から住民の生活実態を知り、予定していた健康教育の内容をその場で変更することもあります。その内容は地域課題把握へのヒントになることばかりです。また、当町には住民間はもちろん、役場職員と住民との間にも顔の見える関係性が築かれています。この関係性は一朝一夕で成立するものではなく、これまで務めてきた職員が大切に築き上げたものです。そしてこの関係性は、私たちの保健師活動を円滑に進めるための後ろ盾となっていると感じます。住民と対話し、住民の生活に触れられる活動は、当町では当たり前でもこのご時世本当に貴重なものだと感じています。

健康相談の様子(料理教室)

 

 

 

 

 

 

 

過疎地で働くことを考えた時大切となるのは、自分が万能ではないことを自覚すること、そして、住民と共にある覚悟を持つことだと思っています。地域の限られた専門職として保健師の役割以上のものを求められることもありますが、地域は1つのチームです。自分自身が万能ではないという意識が、本人や家族、他の専門職、役場職員、近隣住民に頼り頼られ、周囲を巻き込み、1人で抱え込まず伴走者を増やすことに繋がると思っています。また、関係性を広げていくことが過疎地の保健師に求められる力であり、魅力ではないかと思います。

地域課題は多様で、保健師1人の力では解決できないことばかりです。「集落の住民は高齢者ばかり。集落ももう無くなってしまう」と不安を抱く声を聞く度に、なんと声をかけていいか悩み、自分の無力さを痛感します。しかし、解決できないことに不安を抱き続けるのではなく、今目の前で一生懸命に生きる住民と共に生き、住民や地域を見守る気持ちを常に持ち続けていたいと思います。それが地域と共に生きる、過疎地で働く保健師の覚悟ではないかと思っています。