離島看護のキャリア論

小谷和彦 自治医科大学地域医療学センター

これまで、離島の医療や看護について検討してきた。一言で表すと、離島はユニークな魅力の溢れた場だと感じる。現場の声を少しばかり集めてきたので、およそのところをまとめつつ、離島看護に関するキャリア論を絡めて記してみたい。
離島看護の魅力に関してお話を伺うと、皆さんが口にされるのは、まず、地域に根差したり、一住民として過ごしたりする実感である。そして、自らも、また患者さんも同じ地域の生活者であるというスタンスが強調される。自然環境に惚れ込んだ人もいる。離島医療は、地域医療の一表現型だとリアルに思える。
次いで、疾患に特化しない総合的な判断や技能が必要であると口を揃えて言われる。そして、多職種連携によって、ものごとを解決に向けていくことも重要視される。この協働の中で、周囲に頼られるやりがいが垣間見える。これらは日常の実践での醍醐味であろう。島民や職場の理解や関係性は就業において大事なポイントになるようだ。他方で、技能を研鑽するのに距離と時間を若干要することや、連携する資源が必ずしも多くないことなどは課題として付言されることもある。
実は、医師にも離島医療の魅力を問うたことがある。住民との距離のほど良さ、総合診療やケアマネジメントの力量の向上、自然環境の妙などが上位に挙げられた。コミュニティがつぶさに見えるとか、生活の視点からの最適なケアを選択する意味が分かるとか、本源的な医療について考える機会になるとか、表現は様々だが、その返答の中身は看護師の場合とよく似ている。
医療人や人生のキャリアとして、離島での体験の持つ意義を感じてやまない。他の医療の場と比べるものではないだろう。向き合うと深い世界である。このような体験をキャリアに含めばその基軸になるとも思う。また、場や時間に縛られ過ぎない働き方や看護の方法が考案される時代になり、様々な経験を有するハイブリッドな人材はこれからのキャリアで求められもする。様々な関係の仕方で、離島看護のキャリアを考えていきたい。キャリア論を深め、その発展を促す体制づくりも一層求められよう。

 

著者略歴

小谷和彦
自治医科大学卒業後、医師として地域医療に従事し、2015年より現職。
地域医療研究に取り組んでおり、令和4年度厚生労働科学特別研究事業「離島の医療提供体制の構築に向けた調査研究」や平成30~令和2年度厚生労働科学研究費補助金事業「へき地医療の向上のための医師の働き方およびチーム医療の推進に係る研究」、令和3~5年度厚生労働科学研究費補助金事業「人口動態や地域の実情に対応するへき地医療の推進を図るための研究」の研究代表者を務めるなど離島・へき地医療に関する業績多数。

参考

・小谷和彦.厚生労働行政推進調査事業費補助金(厚生労働科学特別研究事業) 総括研究報告.離島の医療提供体制の構築に向けた調査研究.pp1-9、2023.
・小谷和彦.へき地医療に従事する医師.これからの地域医療を担う人たち~場や人をつなぐ医療人の育成時代に向けて~.地域医療白書第5号(自治医科大学編集委員会).随想舎、pp38-47、138、2023.
・Yamauchi M, Watanabe J, Kawazuma Y, Kotani K. Factors Related to Recruitment and Retention of Doctors on Remote Islands: A Systematic Review. Tohoku J Exp Med. 267、 273-280、 2025.
・山内美樹、小谷和彦.離島における看護師の確保と定着.地域ケアリング、 28、84-86、2026.