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多様な看護の場へ踏み出すマルチ・ハブとしての看護系大学をめざしたい

牛尾 裕子
山口大学 大学院 医学系研究科 教授

看護学生の職業選択は、所在地が最も重要な選択基準との報告がある。

実際、所属大学でも、看護学生の多くは都市部の医療機関や自治体への就職を希望する。看護系大学は、看護職を目指す若者にとって地方から都市へのトランスファー・ハブとなっているのかもしれない。若い学生たちの夢や希望を決して否定するものではないけれども、画一的な都会志向に対しては、看護が必要とされる場は多様であり、それぞれの場に魅力があると伝えたいと常々考えてきた。

筆者にとってのルーラルの原点である前任校での実習地域の風景。この実習で、学生は地域に入り込み住民の声を聞き、住民をエンパワーする‘つどい’を計画実施した。

地域と医療を考える「やまぐち地域医療セミナー」

やまぐち地域医療セミナーは、山口県内で医学・看護学・薬学等を学ぶ学生が「地域を通じて医療を、また医療を通じて地域を感じる・考える」ことをねらいとし、すでに10年以上の歴史をもつ。

やまぐち地域医療セミナーはこちらから

毎年県内のへき地医療対策地域を有する市町とサポーター医師が企画し、学生を受け入れる。学生たちは地域に出て、住民の生の声を聞き、地域で必要とされる医療を実感し、地域そのものの魅力や課題を知る。

近年は毎年80名を超える学生が県内11市町をフィールドに体験型プログラムに参加し、その後一堂に会して報告会を開催している。報告会では、学生たちが生き生きとした表情で体験や抱負を語る。筆者も6年前から看護学生とともに参加している。

筆者にとってこのセミナーへの参加が、山口のへき地医療を知り、その医療を担う方々とつながるきっかけとなった。
このセミナーは学生にとって地域医療のドアをあけて入ってみる経験である。セミナー企画側の熱意を知るほどに、学生には、ドアを開けて一歩入ってみるだけに終わらず、さらに踏み込み深く考える次の段階の学習を提供したいと考えた。

へき地の地域包括ケアを担う看護人材育成・確保循環型システム構築プロジェクト

  • 学生がへき地をフィールドに研究に取り組むことで、データをもとに保健医療の担い手とともにより深く課題を考える機会とすること
  • 受け入れる側にとってもへき地の課題や魅力を明確化する機会となり、人材を受け入れ育成する素地づくりにつながること

このようなWin-Winをねらって計画したのが、「へき地の地域包括ケアを担う看護人材育成・確保循環型システム構築」プロジェクトである。外部資金を獲得し1)、県内のへき地医療対策地域において2年計画で、一部を学生の卒業研究に位置づけ学生を巻き込んで、調査研究を実施した。

1年目はへき地診療所看護師及び医師対象にインタビューを実施し、へき地診療所看護が地域に果たしている役割を明らかにすること、へき地診療所看護職に必要な能力・教育支援体制を明らかにすることを目的とした。

2年目は、県内へき地医療対策地域に所在するへき地診療所、訪問看護ステーション、地域包括支援センターの看護職を対象に、看護職の学習ニードと多職種連携の実態を明らかにすることを目的とした。

この調査の過程では、企画段階からへき地保健医療に従事する専門職や行政関係者の協力を得て、調査結果報告会も開催した。本プロジェクトの詳細は以下より参照いただきたい。

http://publichealthnursing.med.yamaguchi-u.ac.jp/RuralNursing_Project2025.pdf

このプロジェクトの学生にとっての成果は今のところ未知だが、プロジェクトの過程で問題を共有するメンバーのネットワークが形成されつつあることに手応えを感じている。

やまぐち地域医療セミナー初参加で訪れた萩市むつみ地区のひまわり。地元の方が多くの人々に訪れてもらえるよう、丹精込めてひまわり畑を作っていた。学生は、そのような地区を自転車で探索した。

 

山口県で開催:日本ルーラルナーシング学会第21回学術集会

この度、縁あって山口県にて日本ルーラルナーシング学会第21回学術集会(会期:2026年9月12日(土)~13日(日),会場:山口県総合保健会館,学術集会長:牛尾裕子)を開催する運びとなった。

本学術集会のテーマは「かかわる・つながる・動く・変わる-ルーラルから未来への発信-」である。様々な地域の様々な立場のへき地保健医療の現担い手と未来の担い手が集い、知識・情報や経験や思いを交換しあう場になればとの思いを込めて企画した。

プログラムには、研究に取り組んだ卒業生や学生企画も盛り込んだ。
看護系大学が、看護職を目指す若者にとって、地方から都市への一方向のトランスファー・ハブではなく、多様な場の多様な看護の価値、それを担う誇りを学び、多様な看護の場へと踏み出すマルチ・ハブになれるよう、看護学基礎教育を担う立場から、微力ながら引き続き努力したい。

第21回日本ルーラルナーシング学会学術集会についてはこちらから。

1)本事業は「公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団」の助成を受けて実施した。