
隠岐広域連合立 隠岐病院 助産師 加藤 真紀子
当院は島根県の本土より約60㎞離れた離島にあり、島内で唯一の入院施設を持つ2次医療圏を担う115床の病院です。平成18年に産婦人科医師不在による分娩中止の経験をしています。島で産みたいと願う産婦のニーズに応えるべく、助産師として何ができるのか、模索奮闘し、ローリスクの産婦に限定して、島根県初、離島初となる院内助産で分娩を再開しました。その時から私たちは「島で産みたいと思う産婦が一人でもいる限りお産を守る」という共通認識で今日に至ります。しかし今年度、助産師の定年退職や産育休が重なり、助産師の大幅減、麻酔科の常勤医不在、産婦人科医師1人体制など再び島での分娩の危機が訪れています。そこで、今年7月には、島民のニーズを把握することと当院の状況を知っていただくためのシンポジウムを開催しました。(アーカイブ配信はこちら)

その結果だけでは今後の隠岐のお産について決めていくことはできませんが、方向性について検討するとても貴重な機会となりました。島での医療は狭いコミュニティの中、島民との対話や距離感の近さ、お互いが見えて触れられる関係性で実践できるところにやりがいや魅力があります。自分の実践した看護が、温度差を感じられる近さで評価できるところが時に厳しく感じることもありますが嬉しさもまたひとしおです。
離島医療は限られた資源・人材でどう安心安全な医療を提供するかが鍵です。そこには創意工夫や発想の転換力が求められます。ないものはないとして、臨機応変に対応する力も必要です。一見大変そうに思われるかもしれませんが、皆で知恵を出し合って、今できる限りの最大を達成できたとき、その達成感たるや、スタッフが一つになる瞬間があります。チーム医療の原点を体感することができます。また、ドクターヘリなどによる患者搬送の必要性も多くあり、波高や風向などの天候は日々関心を高く持ち、天候予測を基に早めの判断を求められることもあります。季節や天候と共に暮らすことは、まさに人間的な営みであり、自然と共存する実感を味わうことができます。

自己研鑽やキャリア形成については、今やオンラインでの研修受講や学会参加も当たり前の時代であり、自分自身が目標をしっかりと掲げることで決して難しいことではありません。混合病棟であることが、ジェネラルな看護実践を求められるため、今後我が国において最も需要が増えると考えられる在宅医療、訪問看護の視点ではそのスキルを十分に身につけることも可能です。
離島での看護の仕事は、自分自身も島民として、島民と共に、島民同志のつながりを感じながら作り上げていく人間味豊かな仕事です。ぜひ一緒に経験しませんか。
